虫を撮り始めてからもう10年近くになりますが、同定力はさっぱり進歩しません。蛾に関しては家に帰ってネットで調べるとだいたいわかるんですが、 自然観察会で名前を聞かれても 「蛾」とか、「カメムシの一種」とか…まるで役立たず状態です 。ポケット図鑑さえあればと思ってましたら(本当?)、『日本の昆虫1400』という本が最近発売されて評判が良いようなので、試しに買うてみました。届いたので少し感想などを書いてみたいと思います。
2巻に分かれていて両方で1400種載っています。
(1) 槐真史・高井幹夫・奥山清市・長島聖大・井村仁平 『日本の昆虫1400 (1)』 2013年4月19日発行、初版、文一総合出版、A6版、320ページ。 出版社のサイト
(2) 槐真史・高井幹夫・奥山清市・長島聖大・市毛勝義(ハエ目)・佐藤和樹(シリアゲムシ目)・中島淳(コウチュウ目)・横川忠志(クワガタムシ科)・井村仁平・川島逸朗 『日本の昆虫1400 (2)』 2013年5月31日発行、初版、文一総合出版、A6版、320ページ。
出版社のサイト
「出会う頻度の高い種を重点的に収録」というコンセプト、写真はほぼ白バックの生態写真、適所に識別ポイントが書かれている、 2巻で1400種収録、 ポケット判で持ち運びに便利、 で価格は2冊あわせて税込みなんと2,100円。
大まかなページの割当は以下のようになっています(数字はページ数)。
[1巻] チョウ目 124 (チョウ 54、蛾 70)、ゴキブリ 4、カマキリ 目 6、バッタ目 44、ナナフシ目 4、ハサミムシ目 4、カメムシ目 114 (ハゴロモ・ヨコバイ・アワフキムシ 9、セミ 13、アブラムシ・カイガラムシ 6、水棲カメムシ 10、カメムシ・カスミカメ・サシガメ・グンバイムシなど 74)
[2巻] カゲロウ目 2、トンボ目 68、カワゲラ目 2、トビケラ目 10、アミメカゲロウ目 8、コウチュウ目 144、シリアゲムシ目 8、ハチ目 48、ハエ目 24
写真が大きく(1枚につき1ページの1/8程度)、とても奇麗なので、これだけでも十分価値があると思います。チョウ、バッタ、セミ、トンボ、クワガタなど人気のありそうな種類は、検索表がついていたり、識別ポイントが充実しているので、けっこう使えそうな気がします。
蛾のページを少し見てみましたが、まだまだ改善の余地はあると思うので、要望を書いてみます。
私が普通種と思ういくつかの種類が載っていないのが気になりました。ヒゲナガガの仲間、シバツトガ、シロオビノメイガ、バラシロエダシャク 、フタホシシロエダシャク、クロスジフユエダシャク、ヒメシャクの仲間、オオトビモンシャチホコ、コトビモンシャチホコ 、キノカワガ 、クロホシフタオの仲間、オオタバコガ、ナシケンモン等。蛾のエキスパートの方は灯火採集を行うのですが、それメインになってしまうと、一般の人がよく見る種類とは違ってきますので、いろんな人の意見を聞いてみてほしいです。
もう少しミクロ蛾を増やしてほしい気がします。ノメイガ7、ツヅリガ3、フトメイガ1、スカシバガ2、マダラガ4、トリバガ1、イラガ5、ヒメハマキ1、コナガ1しか載ってません。
同定に関する記述が甘い気がします。例えばヘリオビヒメハマキのコメントは、「本、四、九/8〜10月/平地〜山。前翅の中央付近に黒い三角紋」となっていますが、クロサンカクモンヒメハマキの名前を出しておくべきかと思います。
以下、少し見て気づいた間違いを載せておきます。出版社かどこかでWebに随時載せていけば良いと思うのですが。
1巻 ノメイガ類
ノメイガ類がメイガ科になってますが、現在はツトガ科に含まれているようです。
1巻(p.71) コナガ
写真はコナガでなく、Monopis sp. です。
スガ科 → コナガ科
オスは背の黄白色帯で多種と識別可能。メスにはこの帯がなく、多種との識別は困難 → 黄白色の帯を持つ種類は複数いるのでこの記述は間違いです。メスも目立たなくなるだけで、帯はあるようです。コナガは触角を前に突き出すので、それで絞り込めるのかどうか…。
1巻(p.104) クビワシャチホコ
写真はツマジロシャチホコです。
1巻(p.105) ツマキシャチホコ
写真はツマキでない気がします。背中に暗色紋があればツマキらしいので、暗色紋を持つ個体を使った方が良いと思います。文章も単に難しいとするのではなく、「背中に暗色紋があればツマキ、なければ同定は難しい」等としておくと良いと思います。
2巻(p.233) イノコヅチカメノコハムシ
オオムラサキシキブなどに集まる普通種 → イノコズチ
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