日本の図鑑の記述が古くから間違っているのですが、それについて調べたことをまとめました。
日本語の文献では刺毛という用語が使われている場合がありますが、英語ではspineというようなので棘毛という用語を使うことにしようと思います。
seta -> 刺毛
spine -> 棘毛
なお引用した部分はそのままになってます。
ミカントゲコナジラミの亜縁部の棘毛の数はDubey2012のAleurocanthus属の検索表の中に以下のような記述があり、雌が11対で雄が10対です。
— Dubey2012: p.7 —
Female puparium with 30 pairs of dorsal spines, of which 11 pairs on submargin (Fig. 55); all the submarginal spines placed singly …..A.spiniferus
またKanmiya2011に以下の記述があります(チャトゲコナジラミの記載ですが亜縁部の棘毛は同じ)。
— Kanmiya2011: p.30 —
Chaetotaxy. Dorsal surface with 11 (female) or 10 (male) submarginal glandular spines …
私が実際に確認したのは、カラタネオガタマの大きい方が11対で小さい方が10対でした。大きい方が雌で小さい方が雄でしょうから、まず間違いないであろうと考えています。
ところが日本産コナジラミ総目録では、この記述が逆になっています。
— Miyatake1980: p.323 —
亜縁部には♂では11対、♀では10対の刺毛があり…
いつから間違っていたのでしょう?
甲府にある県立図書館に行き北隆館の『日本昆虫図鑑』1932年版と1951年版を見てきました。
— 日本昆虫図鑑(1932): p.1821 —
雄は亜縁部に11対の刺毛を有す(雌は10対) … (桑名)
1951年版も同様。
1932年版ですでに間違ってますね。間違いは誰にでもあることですが、半世紀に渡って修正されないとうのは、
ちょっと異常な気がします。
ブドウコナジラミのワックス問題とか、サカキコナジラミの葉表問題とかも、やはり何か間違っているのでしょう。日本はコナジラミの研究に関して先駆的役割を果たしましたが、当時の情報は量が少なく質も悪く、今では負の遺産となっているように思えます。誰かが再検討する必要があると思うのですが、どうなっているんでしょうかねぇ、日本の昆虫学は。
【 引用文献 】
[1] Dubey, A.K. & Ko, C.-C. (2012) Sexual dimorphism among species of Aleurocanthus Quaintance & Baker (Hemiptera: Aleyrodidae) in Taiwan, with one new species and an identification key. Zootaxa, 3177, 1–23
[2] Kanmiya, K et al. (2011) Proposal of new specific status for tea-infesting populations of the nominal citrus spiny whitefly Aleurocanthus spiniferus (Homoptera: Aleyrodidae). Zootaxa, 2797, 25-44.
[3] Miyatake, Y. (1980) A list of the whiteflies of Japan with their host plant and distribution data (Homoptera: Aleyrodidae) [In Japanese]. Rostria, 32, 291-330.
宮武頼夫『日本産コナジラミ類総目録』
[4] 一色周知ほか(1932) 日本昆虫図鑑, 北隆館
[5] 石井悌ほか(1951) 日本昆虫図鑑, 北隆館
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