長坂蛾庭

オニゼンマイコブアブラムシ Micromyzus osmundae Takahashi, 1963

2022年の初夏に観察した、オニゼンマイのアブラムシの記録です。今ごろですが。

場所は北杜市の山で標高1,300ぐらい。

2022年6月12日

不明のシダ植物にアブラムシがついていました。

2022年6月18日

無翅成虫です。

2024年5月11日

ホストは2年後に判明しました。葉の途中に胞子葉がある(?)という特徴的なやつで、オニゼンマイで間違いなさそうです。このときはまだアブラムシは見つかりませんでした。

2024年5月25日

雌成虫が出てました。少し太いのもいました。幹母なのかなぁと思ったのですが、違うかもしれません。ezo-aphidさんからコメントをいただきました。右側の太めなのは幹母で良いそうです。

検討

単純にホストからオニゼンマイコブアブラムシ Micromyzus osmundae Takahashi, 1963 の可能性がありそうです。原記載Takahasi1963のわかる部分を抜粋すると、以下のような感じです。

無翅胎生雌: 黄色、触角は黒、ただし第2節は浅黒い?(dusky)、第1節は淡色ぎみ?(paler)。 角状管、尾片、肛板は淡色。 腿節は淡色、先端は若干茶色っぽい、脛節と附節は真っ黒。 触角の長さは体長の3/4。 角状管は円柱状、長く、複眼間の距離よりも少し短い、長さは中央部の幅の10倍ぐらい、尾片の1.5倍から2倍くらいの長さ。体長2mm。Frontal tubercle(Antennal tubercleと同義?)が著しくConverging(参考文献(3)参照)。

〜Takahashi1963より(自信無いので原文見て確認してください)〜

を見ると、色や外観はだいたい合ってそうです。頭部のコブの形も2022年6月の有翅と無翅の成虫はそれっぽいのでほぼほぼ間違いないように思います。

2024年5月25日の1枚目の成虫はつるっとしてコブが無いですし、2枚目はなだらかな感じですが、おそらく撮影する角度に依るのだと思います。もう少しいろいろな角度から撮影しておく必要がありそうです。

だいすけさんにサンプルを送ったのでもう少しはっきりするかもしれません。サンプル少し取ってあるので、時間ができれば自分でも検鏡してみようかと思います。

ホストに関する疑問点があるのですが、オニゼンマイが冬に地上部が枯れてしまいます。卵で越冬するとなると一次寄主が別にあるということでしょうか?

参考文献

(1) Takahashi, R. (1963) Eumyzus, Paramyzus, Macromyzus, Sitomyzus, Micromyzus, and Micromyzodium of Japan (Homoptera : Aphididae). Insecta matsumurana, 26(1), 55-63. PDF(HUSCAP) — 原記載

(2) Miyazaki, M. (1968) A REVISION OF THE FERN APHIDS OF JAPAN WITH DESCRIPTIONS OF THREE NEW SPECIES (HOMOPTERA : APHIDIDAE). Insecta matsumurana, 31(3), 13-24. PDF(HUSCAP) — シダ類に付くアブラムシの検索表が載ってます。古いですが。

(3) Antennal tubercle < AphID — Antennal tubercleのいろいろな図が載ってます。

(4) Micromyzus osmundae Takahashi, 1963 < Aphid Species FIle

(5) オニゼンマイ < ja.wikipedia.org

(6) Miyazaki, M. (1972) DISCOVERY OF THE FUNDATRIX OF MACROMYZUS WOODWARDIAE (TAKAHASHI) (HOMOPTERA : APHIDIDAE), WITH BIOLOGICAL NOTES, Kontyû, 40(1), 36-39. PDF(国会図書館デジタルコレクション) — 移住性のコモチシダコブアブラムシの幹母の記載。


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コメント

“オニゼンマイコブアブラムシ Micromyzus osmundae Takahashi, 1963” への8件のフィードバック

  1. ezo-aphidのアバター
    ezo-aphid

    5月25日の画像が幹母(右)と無翅雌(左)ですね。立体写真なので長さはおおよそですが、幹母の体長は2.7mm、触角第6節は0.40mm、無翅雌の体長2.5mm、触角第6節は0.57mmです。第6節基部は太く、感覚板からは先端部が急に細くなってます。
    幹母の触角第6節の「先端部/基部」と(後脛節/体長)は「1.8」と(0.43)、無翅虫では「2.8」と(0.51)くらいでした。触角第6節の比の方が顕著で、判定が容易です。 ぱっと見で、幹母は丸みが強いですよね。
    「イチゴハトゲアブラムシ」の追加図でよく伝わります、有難うございます。

    「イチゴハトゲ」は、幹母の角状管と肉棘が大きめというのは例外的だそうです。モモコフキアブラムシの幹母は角状管が無いため、中国から新種として記載されたことも。また、樹の越冬芽の芽鱗に擬態して、丸い褐色になる種もいます。幹母に限りませんが、見ていないモルフは沢山残っているようです。

  2. ezo-aphidのアバター
    ezo-aphid

    AphIDの図が見られるなら、もう少し厳密に。末端節の基部長は「前節端部から1次感覚板の先」までです。それ以降が先端部 Processus terminalis(末端突起の意)で、鞭状部とも言ってたようです。

     

  3. Hepota2のアバター
    Hepota2

    ezo-aphidさま、ご教示ありがとうございます。

    これが幹母とすると冬はオニゼンマイのどこかに産卵すると思うのですが、オニゼンマイは冬には地上部が枯れるようです。このような場合、一般的に卵はどこに産み付けられるのでしょう? 枯れ葉かあるいは根っこでしょうか?

  4. ezo-aphidのアバター
    ezo-aphid

    木本では、卵は越冬芽の付近にあると思います。晩秋の灌木類では越冬芽で見かけます。広葉樹林にいるアブラムシを、カラ類などの小鳥が啄んでいるらしい(カラ類の貯食行動:「野鳥の図鑑、陸の鳥ー1」中村登流1986)。これが本当なら、晩秋・早春には卵も食べてるはず。

     本題の、草本のアブラムシの場合ですが、成虫になった卵生雌は食草にはこだわりません。キク科のアブラムシでは、生葉ではなく付近の枯れ落葉に産卵してました。ふ化した幹母幼虫は、シダ類などの多年草ならほぼ確実に、ツリフネソウなどの一年草でも越冬種子の発芽をあてに、食草に辿り着けます。
    虫体が凍りやすいのは、水(滴?)と接触している場合だそうで、枯葉に産めば卵の生存率が高くなりそう(寒冷地に限りますが)。ヨモギ茎のアブラムシでは蟻道内で見ました。根に暮らすアブラムシの卵には出会えていません。

     ワタムシの場合は、有翅の産性虫が樹幹に飛来して無翅雄と産卵雌を産み、受精した卵は樹皮のひだに産みつけられるようです。
     

  5. Hepota2のアバター
    Hepota2

    ezo-aphidさま、ありがとうございます。秋に出る雄と卵生雌も観察してみたいと思います。

    あと、このアブラムシは夏には見られなくなったので、単に数が減っただけなのか、どこかに移動したのかも調べてみたいです。

  6. ezo-aphidのアバター
    ezo-aphid

    シダのアブラムシは生活史不明の種が多いように思います。この種も、まずは移住性の判定が必要なので、秋の有性世代(とりあえず雄)を探すべきです。
    その際、卵生雌が居れば非移住性、卵生雌が不在で有翅胎生雌が居れば移住性の可能性があります。

    シダコブアブラムシMacromyzus woodwadiae は移住性で、異様な姿の幹母をMiyazaki(1972)さんが報告してます。一次寄主はHydrangea involucrata でしたが、秋世代は他のHydrangea でも見つかります。この幹母は3mm強と大型で、体表に多くの肉棘が見られます。Kontyu 40(1):36-39.の図をご参照ください。(ネットでは呼び出せず)写真での公表は無かったように思います。

  7. ezo-aphidのアバター
    ezo-aphid

    追伸:勝手に「肉棘」と表現しましたが、実体は皮膚(たぶん。無翅虫では硬化部にあたるらしい)なので正しくありません。Takahashi、Miyazakiともに「projection」と表現してました。 「Kontyu 40(1):36-39.」を呼び出せたら、参考文献に載せて下さい。

  8. Hepota2のアバター
    Hepota2

    ezo-aphidさま、ありがとうございます。秋になったら探してみます。

    シダコブアブラムシというのはコモチシダコブアブラムシですよね。Miyazaki(1972)は国会図書館デジタルコレクションでPDFが見れましたのでリンクしておきました。コモチシダコブアブラムシの幹母はたしかに異様な形をしてますね。一度見てみたいです。

コメント内に挿入してもらっていた『takoyaki』は不要になりました。

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