関連記事: その1、その3
野辺山です。
ケヤマウコギの状況を見に行ったのですが、なんとすでにゴールが割れていました。2化(以上?)だったようです。まだ実はありませんから、葉っぱや枝にゴールができていました。羽化確認したわけではありませんが、おそらく同種だと思います。

ゴールをいくつか持ち帰って開いて見ましたら、かなりいろいろなステージの幼虫が見られましたので、何化かを調べるのは難しそうです。1枚目は寄生されてます。


その後、いくつかの場所でケヤマウコギの株を見つけましたが、かなり高い確率で寄生されていました。こんな感じで若い枝に大量に寄生されてることが多いです。8月11日撮影。

蕾ができ始めていて寄生蜂がウロウロしてました。


よく調べてみると、キジラミの幼虫がウロウロしてました。寄生蜂は長い産卵管を持つタイプでは無さそうなので、どうやってゴール内のキジラミに産卵するのかと思ってましたが、このタイミングで産卵するのかもしれませんね。

オスの成虫を得たいので、継続して観察する予定です。
サワフタギの葉の先端が畳み込まれたようになっているのを見つけました。


中を覗いてみるとキジラミの幼虫です!!

調べてみるとサワフタギにはミドリトガリキジラミがつくようです。ゴールの名前はサワフタギハサキオレフシのようです。
6月1日、少し大きくなってました。

6月13日、間を開けすぎたかほとんど羽化して分散しているようでしたが、2匹ほど見つけることができました。まだテネラルのようです。

■ ミドリトガリキジラミ Trioza magna Kuwayama, 1910 ♀(未成熟)
成熟した写真を撮るつもりだったのですが、忘れてました。
また来年…
関連記事: その2、その3
3週間ぐらい前になりますが、
飯盛山の麓でキジラミが羽化しているのを見つけました。

羽化の様子をGIFアニメーションにしてみました。現地で手持ちで撮影したのですが、20分ほど掛かって大変でした。

よく調べるとウコギのような樹木の実にゴールができていてました。

樹木はウコギに似ていますが少し違うようです。実の付き方からケヤマウコギのようです。ウコギと違って雌雄同株で雌花の脇に雄花がつくようです。
葉っぱです。




枝のトゲです。

枝にもゴールがありました。

羽化した成虫の捕獲には失敗したのですが、これらのゴールをビニール袋に入れて持ち帰ったところ2匹ほど羽化していました。矢印の翅脈はウコギトガリキジラミとはまったく異なっています。

ゴールを1週間ほどおいておいたのですが割れる気配がなくカビが出始めていたので、カッターナイフでカットしてみました。ほとんどが寄生されていましたが、寄生されていなかったものは次々と羽化しだしました。
寄生されていた幼虫です。ピクリとも動かず、少し茶色っぽくなっています。

たぶん寄生されていない幼虫です。動きます。

羽化後少し時間が経過した成虫です。

羽化した成虫とエタノール漬けの幼虫を農研機構の井上広光さんに送って調べてもらい、以下のようなコメントをいただきました。日本未記録種ですがとくに秘密にしなくてもよいという確認を得ましたので、引用しておきます。
成虫はすべて雌でしたが、交尾器が極端に短くはなく、先端がとがることからも、BactericeraではなくTriozaであることが確認できました。
また、幼虫も前翅芽の肩部が前方に張り出さないことからも、Triozaであることがわかります。
極東ロシアから記載され、昨年韓国からも記録された Trioza stackelbergi Loginova, 1967 の可能性が高いです。
プレパラート標本にするなどしてもう少し詳しく見てみますが、今のところ差異が見つかりませんので、本種ということで落ち着くと思います。
日本で見つかるのはこれが初めてです。
和名は「ケヤマウコギトガリキジラミ」としておきましょう。
既知のホストはEleutherococcus (=Acanthopanax) sessiliflorusで、この植物は日本には分布しないのですが、インターネットで画像を調べてみますと、ケヤマウコギに非常に近縁のようです(どちらもヤマウコギ節Cephalopanax;紛らわしいことにヤマウコギはウコギ節Acanthopanax)。
比較的近いうちに正式な報告が出るようですので、出たら追記します。
4月の終わりに、クロウメモドキのゴール内にキジラミの幼虫を見つけました。
以降継続して観察して成虫が出たので以下にまとめます。
4月28日、不明な樹木を発見しました。調べてみるとクロウメモドキのようです。

葉の縁を折りたたんだようなゴールがあります。

中を覗いていみるとキジラミの幼虫がいました。

5月4日: あんまり変わってませんでした。黄色っぽい方です。緑色のは別種です。

5月10日: 外を歩いていた幼虫です。スジボソヤマキチョウの幼虫がかなりないきおいで葉を食べていたので、追い出されたのかもしれません。

5月17日: 成虫が出てましたので成虫とゴールのついた枝を持ち帰って中を調べていたところ、中にいた幼虫が歩き出し、その後少し眼を離したすきに羽化を開始してました。



5月18日: これは採ってきた成虫の方で1日以上経過した状態です。


■ クロウメモドキトガリキジラミ Trichochermes grandis Loginova, 1965
日本から記録されているクロウメモドキにつくトガリキジラミは、クロウメモドキトガリキジラミだけで特徴もあうので、その可能性が高いと思います。ただ、かなり珍しい種のようであまり調べられていない気がします。厳密には詳しく調べたほうが良いのでしょうね。
とりあえず。
Miyatake1971には斑紋にかなり変異があるように書かれているのでご注意ください。今のところ(3個体)全面が茶色いパターンのみ発生してます。
― 参考文献 ―
Miyatake Y. 1971 – Notes on Psyllidae from Sado Island, Niigata Prefecture (Hemiptera : Homoptera).
. Bulletin of the Osaka Museum of Natural History 24: 5-14. PDF
Psyl’list
少し前の5月27日、クマヤナギの葉っぱにクマヤナギハフクロフシというゴールを見つけました。クマヤナギトガリキジラミの幼虫が作るゴールです。

中をみるとまだ若齢っぽい幼虫がいました。

それからしばらくたった昨日(6月14日)に行ってみたらちょうど成虫が出ていました。テネラルっぽいので、これから色は変わっていくかもしれません。

トガリキジラミ科で前翅の後縁に褐色の帯があるのはクマヤナギトガリキジラミだけのようなので間違いなさそうです。
ゴールは薄いヘラ状で裏から出入りできるようです。そのためか幼虫の体も薄っぺらい作りになっています。


学名はPsyl’listで確認してみると Trioza berchemiae Shinji, 1938 から変更ないみたいです。
【参考】
■宮武頼夫・松本浩一・井上広光(2014)キジラミ類(カメムシ目)の絵解き検索.環境アセスメント動物調査手法, 24: 15-59.
■林 成多・宮武頼夫(2012)山陰地方のキジラミ図鑑.ホシザキグリーン財団研究報告特別号, (6): 1-97.
近所のサイカチの木で見つけました。
サイカチの葉にサイカチハオレフシというゴールを作り、その中で成長します。
サイカチ自体が珍しいので、このキジラミの情報も少ないです。
ゴールです。

ゴールの中を見ると、若齢幼虫から成虫までいました。
成虫です。


終齢幼虫と若齢幼虫です。


近似種にジャケツイバラキジラミがいますが、Cu脈付近に顕著な褐色紋はないことで区別できるようです。
属名は日本昆虫目録ではEuphalerusですが、Psyl’listに合わせておきました。
2011年にEuphalerus属からColophorina属に移動されたようです。
同属だったジャケツイバラキジラミの方はそのままみたいですが…
越冬成虫を追加しておきます。2018年4月28日撮影。

― 参考文献 ―
[1] Shinji, O. (1938) Five new species of Psylla from North-Eastern Japan. Kontyû 4: 149-151 [147]. PDF
[2] Miyatake, Y. (1973) Notes on the genus Euphalerus of Japan, with description of a new species (Homoptera : Psyllidae). Bulletin of the Osaka Museum of Natural History. 27: 23-28. PDF
[3] Psyl’list
―履歴―
2018-04-30: 参考文献を追加。越冬成虫の写真を追加。