長坂蛾庭

エゴノキコナジラミと寄生蜂

少し前に被リンクのチェックをしていたところ、石黒樹木医事務所さんの日記から、うちのサイトへのリンクが張られているのを発見しました。そのページにはキンメツゲ(イヌツゲの園芸品種)にエゴノキコナジラミらしきものが大量についているという情報が載っています。エゴノキコナジラミのホストはエゴノキしか記録がなく、気になったので、日記を書かれた石黒さんに「検体欲しい」というメールを送ってみたところ、快諾を得まして、先日送っていただきました。石黒さまありがとうございます。

で、調べてみたんですが…

下がその蛹殻の写真です。

■エゴノキコナジラミ Rhachisphora styraci Takahashi, 1934

どうみてもエゴノキコナジラミです。検鏡してみましたが、間違いなさそうです。

下の中央の個体は寄生蜂が脱出した後のようです。よく見る脱出痕とは違う感じです。

標本を作るために検体を枝からいくつかはがしてみると、高い確率で寄生されていることがわかりました。下は一匹取り出してみたところですが、同じ蛹殻に全部で3匹はいってました。

で、この寄生蜂をコナジラミと同じような方法で標本にしてみました。KOHには常温で数分浸けただけです。多分死んで長時間経過しており、中身は無くなっていたように思います。

小さいのと大きいのがいて、♂と♀だろうと思います。♀は2個体いたので背面と腹面を上にしたつもりだったんですが、両方とも腹面が上になってしまいました。

♂。

Amitus sp. ♂

♀。

Amitus sp. ♀

コナジラミの寄生蜂はあまり種類が多くなく、そららを順番に調べていくと、ハラビロクロバチ科のAmitus属というそっくりなのを見つけました。

♂の触角は10節、♀の触角も10節だが先端の3節が融合して8節に見える。ということで触角はあってそうです。

跗節はすべて5節。1枚目の前脚はちょっと醜いですが、顕微鏡では確認しました。

♂の背面です。頭部とか中胸のシワシワ模様が、上でリンクしたAmitus属のものによく似ています。

♀の顔。

エゴノキコナジラミの天敵について調べてみたところ、文献には何も書かれていませんでしたので、ホストのみならず、この天敵も初記録だろうと思います。だれも研究していないんでしょうか。

さて、なぜこのように大発生するものが見逃されてきたのでしょうか?

想像ですが…
通常は寄生蜂によって発生は強く押さえられており、そのため稀にしか見ることができず、本来複数の植物につくのにこれまで発見されなかった。今回は天敵の蜂が近くにいない状況であって、大発生した。たまに大発生することもあったが、一般の人はカイガラムシかなにかだと思ってどこにも報告されなかった。
といったところですかね。

こんな状況で盆栽とか輸出して、とんでもないことが起きなきゃ良いのですが。

追記:
Evansのサイトにコナジラミにつく寄生蜂の検索表がありました。
こちら
Amitusで大丈夫そうです。


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コメント

“エゴノキコナジラミと寄生蜂” への2件のフィードバック

  1. ezo-aphidのアバター
    ezo-aphid

    こんばんわ。一件落着、すごーい、です。
    コナジラミは、寄主植物を選ぶようでいて、このようにかけ離れた所属群にも寄生する、という点がどうにも理解できません。彼らの餌の選択基準は、いったいどうなってるのでしょう。
    「コナジラミにつく寄生蜂の検索表」は、判りやすくてとてもいいですね。こんなのがあると、つい被寄生コナジラミを探してみたくなります。

  2. Hepota2のアバター
    Hepota2

    ezo-aphidさん、こんばんは。
    コナジラミの食性は本当に良くわかりませんね。外見で区別できないのでひとくくりにされている種もいそうですが。
    コナジラミに限ったことではないですが、原産地で天敵を探すことは非常に重要なことだと思います。シロウトがどこまでできるのかわかりませんが、私も少しずつ調べていきたいと思っています。

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