長坂蛾庭

無限遠補正系の対物レンズとフォーカスブラケット機能による自動深度合成写真撮影システムの可能性

2017年4月1日: 改変

実は今年の6月ごろにカメラを購入しました。Olympusの OM-D E-M5 Mark II です。このカメラはフォーカスブラケット機能が搭載されています。フォーカスブラケットとはピントを少しずつずらして撮影する機能です。このカメラに適当な望遠レンズと無限遠補正系の対物レンズを組み合わせると高倍率自動深度合成撮影システムができるはずなのですが、どこまで実用になるでしょうか? 少し調べたのですが、別のことを始めてしまい今日に至っております。

目的としては、屋外で使えるようなコンパクトな自動撮影システムで、解像度に関してはほどほどあればよく、手持ちで絞り込んで数枚で撮るといった使い方もしたいのですが…

1. 結論

結論から書きます。

(1) ローリングシャッターの問題
フォーカスブラケットモードではシャッター方式が電子シャッターに固定されます。このカメラの電子シャッターはローリングシャッター方式なんですね(C-MOSセンサはだいたいそうみたい)。ローリングシャッター方式ではシャッタースピードをかなり低速(1/20秒以下)にしないとストロボと同調しません。そのためストロボが必要な場合はかなり暗い状態にする必要があって昼間に動く被写体や手持ち撮影は難しくなると思われます。かなり致命的ですが、グローバルシャッターのカメラが出てくるのを待つしかなさそうです。
-2017年4月1日追記-
「フォーカスブラケット時にメカシャッターを使えるようにして欲しい」という要望を出してみようと思います。
フォーカスブラケット時に電子シャッターに固定されるのは、おそらくハード的な問題ではなくて品質的な問題だと思います。しかしストロボを使えばブレも少ないですしフレームごとのズレは深度合成ソフトで揃えてもらえるのでそれなりに使えると思います。
-追記終わり-

(2) 操作性の問題その1
撮影が終了してもフォーカスを戻してくれないので、毎回手動でピントリングを回してフォーカスを最短位置にする必要があります。猛烈にイライラして使う気がしませんが、ファームウェアのアップデートで対応できると思われるので、要望してみたいと思います。

(3) 操作性の問題その2
ステップ(一回ごとにどれだけピントを送るかという指定)の設定可能範囲が狭すぎて、絞り込んで数枚で撮るということができません。これもファームウェアのアップデートで対応できそうなので要望してみたいと思います。
-2017年4月1日追記-
ステップは絞りに関連して自動的に変わることに気づきました。おそらく通常の撮影方法では十分な仕様になっているのでしょう。なので今回の使い方はメーカーの想定外なので、要望を出してもダメかもしれません。
-追記終わり-

(4) z方向の範囲が狭い
結像レンズの焦点距離が150mmのとき、5xの対物レンズで2mm、10xの対物レンズで0.5mmでした。これは倍率を落として撮れば良いかなと思います。
なお実視野は4.6×3.5mmと2.3×1.7mmですが、外周部がどれくらい実用になるかわかりません。

(5) ケラレの問題
結像レンズが使えるかどうかは試してみないとわからないので購入時は注意した方が良いです。テレコンを入れると改善されるかもしれません。テレコンMC-14はクソでかい望遠系のレンズでしか使えないようです。
今回購入したのはPanasonicのLUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6です。こんな感じでケラレます。

2. サンプル

家の中にいたショウジョウバエの一種を撮影してみました。
画像をクリックすると拡大されます。

Nikon CF Plan 5x EPI

Mitutoyo MPlan APO 10x

撮影風景
BHCはXYZステージとして使ってます。ステージ上に白いプラスチックの板を置いてます。かなり振動の影響を受けるのでお勧めしませんが、カメラを鏡基に合体させれば使えるかもしれません。

3. 撮影方法

(1) MENU->撮影メニュー2->ブラケット撮影->Focus BKTで、

a. 撮影枚数 999
これは固定で良いかと

b. フォーカスステップ 5
1回の撮影毎のピント送り量を1から10の整数で指定します。単位はステッピングモータのステップ数だと思います。あらかじめz方向の範囲と撮影枚数を測定し、1ステップあたりのおおよその距離を調べ、NAから被写界深度を求めて大まかなステップ数を求めます。例えば今回使用したPanasonicのレンズは最短から無限遠まで420ステップほどです。5x対物の場合撮影範囲は2mmなので2mm/420で0.0047…、1ステップあたり約5μmです。線形ではないと思いますがここはテキトーです。NA1.3の対物レンズの場合被写界深度が30μmほどなので、30/5の6ステップで良いだろうと思います。たぶんな、たぶん。
1から10までしかないので、面倒な人はいくつか試してみると良いです。

c. 充電待ち時間 0秒
 ストロボの充電時間を設定できますが、0,1,2,4,8,15,30秒の中から選べます。1秒未満の場合は連写スピードで調整できるようです。ただし10,9,8,7,6,5fpsの中からしか選択できません。
-2017年4月1日追記-
フォーカスブラケット時にも連写スピードの設定が有効なのですが、どうもシャッタースピードが加算されるようです。
連写スピードを10fps、シャッタースピードを1/20とした場合、実際の連写スピードは6.7fpsぐらいになっている気がします。
1/(1/10 + 1/20) = 6.666…
-追記終わり-

(2) ズーム位置を適当に固定します。
(3) ストロボを使う場合はシャッタースピードを1/20以下にし、充電待ち時間等を設定します。
(4) 絞りを開放にします。絞りたい場合は、対物レンズの後ろに絞りユニットを挿入します。
(5) 結像レンズ側の焦点をピントリングをまわして最短にします。
(6) 物体かカメラを移動して、物体の少し手前にピントが来るようにします。
(7) シャッターボタンを押すと開始。
(8) 無限遠になるか、指定した撮影枚数撮られるか、途中でシャッターボタンを押すと停止します

4. 深度合成ソフト使用時の注意

この方法で撮影すると倍率が変動しています。

これは深度合成ソフトが自動的に倍率を補正してくれるのですが、オプションがオフになっていたり範囲が不適切だと動きません。Zereneの場合は、Options->Preferences->Alignment->scale。たぶん(未確認)

5. 要望
オリンパスに要望してみたい項目です。
(1) 撮影が終了したらフォーカスを元に戻してほしい。
(2) ステップの指定範囲を広げてほしい。原理的には2乗系列になってると良いのかもしれません。
(2) フォーカスブラケット時にメカシャッターを使えるようにして欲しい。
(3) 充電時間に1/2,1/4,1/8秒を加えてほしい。


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“無限遠補正系の対物レンズとフォーカスブラケット機能による自動深度合成写真撮影システムの可能性” への1件のコメント

  1. Hepota2のアバター
    Hepota2

    2017年4月1日 修正しました。