長坂蛾庭

イタヤカエデのニタイケアブラムシ

去年(2024年)、イタヤカエデのニタイケアブラムシを1年間観察した記録をまとめておきます。幹母から産卵まで観察できました。去年この仲間を再検討した論文が発表されたのですが、イタヤカエデには複数種がつくので、種名までは特定できてません。

場所は清里方面で、標高は1,300mぐらいです。

4月20日

まだ葉が展開されていないイタヤカエデの枝でニタイケアブラムシ属の幹母らしき発見しました。秋の個体は何回か見てるのですが、年間を通して観察を始めることにします。

5月4日

何世代目か無翅胎生雌と、幼虫(有翅?)。

5月18日

越夏型と有翅胎生雌。

10月20日

こちらは卵生雌と雄だと思います。お尻が飛び出てますね。交尾している個体も見つかりました。雄は有翅のようです。

卵生雌はお尻が飛び出ているのですが、さらに長く飛び出ていて大きさも大きめなのは(下図右上の個体)産性雌じゃないかと予想してます。

10月27日

イロハモミジのニタイケアブラムシが冬芽に産卵していたのでそちらばかり探して卵が見つからなかったのですが、なんと樹皮に産卵してました。お尻が飛び出ているのは隙間に産卵するためかもしれません。

検討

去年、日本産のニタイケアブラムシを再検討した論文が出版されました。

Sugimoto, S. (2024) On the aphid genus Periphyllus van der Hoeven (Hemiptera: Aphididae) from Acer in Japan. Insecta matsumurana. New series, 80, 23-72.
PDF

これによると、イタヤカエデ Acer pictum につくニタイケアブラムシ(Periphyllus属)は、亜種も含めて4種類いるのですが、まず、P. hokkaidensis は雄が無翅ということなので、違うようです。またP. viridis viridisは胎生雌の色がpale greenということなので、これも違うようです。P. kuwanaiiP. viridis osugiensis についてはよくわかりませんでした。

イタヤカエデの亜種については、オニイタヤ Acer pictum pictum か、イトマキイタヤ Acer pictum savatieri のどちらかだと思うのですが、詳しく見てません。

全て同じ種かどうかもわからないので写真だけでは難しいです。ということでいったんお蔵入りですが、だいすけさんにサンプルを送ったので何か分かれば追記したいと思います。

※以前画像をクリックすると拡大されたと思うのですが、WordPressのバージョンを上げたら設定方法が良くわからなくなってしまいました。コンテキストメニューで『新しいタブで画像を表示する』とかを選んでいただければ大きい画像が表示されると思います。


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コメント

“イタヤカエデのニタイケアブラムシ” への2件のフィードバック

  1. ezo-aphidのアバター
    ezo-aphid

    画像拡大できました。無翅の雄がいるとの情報は驚きです。いろんなモルフを丁寧に見ていなかったので・・・、画像を見て判る事だけコメントします。
     5月4日:?viridis類の幹母(尾片が親指爪型に見える)。5月14日:触角先端部が基部とほぼ同長なので幹母。種は不明。10月20日:褐斑黄色の大型個体は胎生雌と思う(黄色幼虫が卵生雌の中齢か)、種は不明。暗褐色はたぶん別種で、尾端が突出してるのが卵生雌成虫(後脛節が膨らんでいる)。第7・8腹節の皮膚が伸長してるのは産卵直前で完成卵があるから)。10月27日:産卵時には第7・8腹節を縮めて卵を産み出す。
     ここに写された3種ともイタヤカエデで育ったとすると、杉本(2024)の「きれいな結論」(Acerの属sectionごとに寄生Periphyllus 種が対応する)、は
    疑問が出てきました。コロニーを追跡して同種のモルフを採集する必要がありますね。
     尾片の形は半月型が基本ですが、生態写真では判別しにくいでしょう。
    産性虫というのは、ワタムシ類のように無翅雄と卵生雌を産む有翅雌を言うことが多いようです。Periphyllusの場合、雄と卵生雌それぞれを産む有翅雌がいるのだろうと思いますが、調べたことが無く全く分かりません。

  2. Hepota2のアバター
    Hepota2

    詳しく見ていただき、ありがとうございます。幹母の判別方法は知りませんでした。

    複数種混じっているとするとやっかいですね。すぐ近くにカジカエデもあって、そこから来ていたりするとかなりやっかいです。とりあえず検鏡して既知種と比べてみるのが近道かもしれません。

コメント内に挿入してもらっていた『takoyaki』は不要になりました。

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