長坂蛾庭

2016年10月7日

無限遠補正系の対物レンズとフォーカスブラケット機能による自動深度合成写真撮影システムの可能性

カテゴリー: 2.道具, 深度合成 — Hepota2 @ 20:23

2017年4月1日: 改変

実は今年の6月ごろにカメラを購入しました。Olympusの OM-D E-M5 Mark II です。このカメラはフォーカスブラケット機能が搭載されています。フォーカスブラケットとはピントを少しずつずらして撮影する機能です。このカメラに適当な望遠レンズと無限遠補正系の対物レンズを組み合わせると高倍率自動深度合成撮影システムができるはずなのですが、どこまで実用になるでしょうか? 少し調べたのですが、別のことを始めてしまい今日に至っております。

目的としては、屋外で使えるようなコンパクトな自動撮影システムで、解像度に関してはほどほどあればよく、手持ちで絞り込んで数枚で撮るといった使い方もしたいのですが…

1. 結論

結論から書きます。

(1) ローリングシャッターの問題
フォーカスブラケットモードではシャッター方式が電子シャッターに固定されます。このカメラの電子シャッターはローリングシャッター方式なんですね(C-MOSセンサはだいたいそうみたい)。ローリングシャッター方式ではシャッタースピードをかなり低速(1/20秒以下)にしないとストロボと同調しません。そのためストロボが必要な場合はかなり暗い状態にする必要があって昼間に動く被写体や手持ち撮影は難しくなると思われます。かなり致命的ですが、グローバルシャッターのカメラが出てくるのを待つしかなさそうです。
-2017年4月1日追記-
「フォーカスブラケット時にメカシャッターを使えるようにして欲しい」という要望を出してみようと思います。
フォーカスブラケット時に電子シャッターに固定されるのは、おそらくハード的な問題ではなくて品質的な問題だと思います。しかしストロボを使えばブレも少ないですしフレームごとのズレは深度合成ソフトで揃えてもらえるのでそれなりに使えると思います。
-追記終わり-

(2) 操作性の問題その1
撮影が終了してもフォーカスを戻してくれないので、毎回手動でピントリングを回してフォーカスを最短位置にする必要があります。猛烈にイライラして使う気がしませんが、ファームウェアのアップデートで対応できると思われるので、要望してみたいと思います。

(3) 操作性の問題その2
ステップ(一回ごとにどれだけピントを送るかという指定)の設定可能範囲が狭すぎて、絞り込んで数枚で撮るということができません。これもファームウェアのアップデートで対応できそうなので要望してみたいと思います。
-2017年4月1日追記-
ステップは絞りに関連して自動的に変わることに気づきました。おそらく通常の撮影方法では十分な仕様になっているのでしょう。なので今回の使い方はメーカーの想定外なので、要望を出してもダメかもしれません。
-追記終わり-

(4) z方向の範囲が狭い
結像レンズの焦点距離が150mmのとき、5xの対物レンズで2mm、10xの対物レンズで0.5mmでした。これは倍率を落として撮れば良いかなと思います。
なお実視野は4.6×3.5mmと2.3×1.7mmですが、外周部がどれくらい実用になるかわかりません。

(5) ケラレの問題
結像レンズが使えるかどうかは試してみないとわからないので購入時は注意した方が良いです。テレコンを入れると改善されるかもしれません。テレコンMC-14はクソでかい望遠系のレンズでしか使えないようです。
今回購入したのはPanasonicのLUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6です。こんな感じでケラレます。

2. サンプル

家の中にいたショウジョウバエの一種を撮影してみました。
画像をクリックすると拡大されます。

Nikon CF Plan 5x EPI

Mitutoyo MPlan APO 10x

撮影風景
BHCはXYZステージとして使ってます。ステージ上に白いプラスチックの板を置いてます。かなり振動の影響を受けるのでお勧めしませんが、カメラを鏡基に合体させれば使えるかもしれません。

3. 撮影方法

(1) MENU->撮影メニュー2->ブラケット撮影->Focus BKTで、

a. 撮影枚数 999
これは固定で良いかと

b. フォーカスステップ 5
1回の撮影毎のピント送り量を1から10の整数で指定します。単位はステッピングモータのステップ数だと思います。あらかじめz方向の範囲と撮影枚数を測定し、1ステップあたりのおおよその距離を調べ、NAから被写界深度を求めて大まかなステップ数を求めます。例えば今回使用したPanasonicのレンズは最短から無限遠まで420ステップほどです。5x対物の場合撮影範囲は2mmなので2mm/420で0.0047…、1ステップあたり約5μmです。線形ではないと思いますがここはテキトーです。NA1.3の対物レンズの場合被写界深度が30μmほどなので、30/5の6ステップで良いだろうと思います。たぶんな、たぶん。
1から10までしかないので、面倒な人はいくつか試してみると良いです。

c. 充電待ち時間 0秒
 ストロボの充電時間を設定できますが、0,1,2,4,8,15,30秒の中から選べます。1秒未満の場合は連写スピードで調整できるようです。ただし10,9,8,7,6,5fpsの中からしか選択できません。
-2017年4月1日追記-
フォーカスブラケット時にも連写スピードの設定が有効なのですが、どうもシャッタースピードが加算されるようです。
連写スピードを10fps、シャッタースピードを1/20とした場合、実際の連写スピードは6.7fpsぐらいになっている気がします。
1/(1/10 + 1/20) = 6.666…
-追記終わり-

(2) ズーム位置を適当に固定します。
(3) ストロボを使う場合はシャッタースピードを1/20以下にし、充電待ち時間等を設定します。
(4) 絞りを開放にします。絞りたい場合は、対物レンズの後ろに絞りユニットを挿入します。
(5) 結像レンズ側の焦点をピントリングをまわして最短にします。
(6) 物体かカメラを移動して、物体の少し手前にピントが来るようにします。
(7) シャッターボタンを押すと開始。
(8) 無限遠になるか、指定した撮影枚数撮られるか、途中でシャッターボタンを押すと停止します

4. 深度合成ソフト使用時の注意

この方法で撮影すると倍率が変動しています。

これは深度合成ソフトが自動的に倍率を補正してくれるのですが、オプションがオフになっていたり範囲が不適切だと動きません。Zereneの場合は、Options->Preferences->Alignment->scale。たぶん(未確認)

5. 要望
オリンパスに要望してみたい項目です。
(1) 撮影が終了したらフォーカスを元に戻してほしい。
(2) ステップの指定範囲を広げてほしい。原理的には2乗系列になってると良いのかもしれません。
(2) フォーカスブラケット時にメカシャッターを使えるようにして欲しい。
(3) 充電時間に1/2,1/4,1/8秒を加えてほしい。

2015年4月12日

試し撮り

カテゴリー: 2.道具, 深度合成 — Hepota2 @ 06:02

昨日組んだ深度合成撮影システムで、ウグイスカグラのAleurolobusを撮ってみました。
ワックスを除くのにキシレンとアルコールを使ったのですが、まだ乾いていなかったようで、溝のところに液体が残ってます。
アルコールに漬けてあったせいか虫体はかなり膨れていて、4μmステップで80枚ほど撮影しました。
CombineZPでAlign(quick) → Do Stackを行いました。
Photoshopで色の補正とレベル補正を行いました。
大きさは測ってませんが、1〜1.3mmぐらいです。
クリックするとオリジナル画像が見れますが、ファイルの大きさが1.3MBほどありますのでご注意ください。

2015年4月11日

生物顕微鏡を微動装置として利用した深度合成撮影システム

カテゴリー: 2.道具, 深度合成 — Hepota2 @ 00:24

コナジラミの生態写真をもう少し高解像度に撮影したくて、去年の秋にミツトヨの10x対物レンズを購入し冬の間に作り上げようと思っていたのですが、いつのまにか春になっていました…

今日ちょっと試してみましたので結果を報告します。

対物レンズはミツトヨの無限補正対物レンズ M-PLAN APO 10Xです。
結像レンズは OLYMPUS ZD ED 40-150mm F4.0-5.6 + 1.4xテレコン、カメラはオリンパスのE-410です。
微動ユニットは生物顕微鏡BHCがそのまま利用できないかと思っていたのですが、ミツトヨの対物レンズが大きすぎてターレットを外した穴には入りませんでした。どうしようか悩んだあげく、ステージとコンデンサレンズを外して、その穴に対物レンズをおさめることにしました。したがって試料と結像レンズが固定で、対物レンズが上下に動きます。無限遠補正系の対物レンズの場合、結像レンズとの間隔をある程度自由にできるため、そういうことができます。

対物レンズと結像レンズの間が開いているとかなり酷いフレアが発生したので、上の写真右のように黒い幕で覆いました。

対物レンズホルダーは、ミツトヨ対物レンズ → Cマウントという部品があったので、それとCマウント延長チューブ、ディスカバーフォトさんから購入した延長チューブ、ABS樹脂の板を使って作りました。

対物レンズホルダーは乗っけてあるだけ、結像レンズはビニールテープで止めてあるだけ、なのでかなり不安定で、電子レリーズも以前壊しちゃったのでありません。悩んだあげく、部屋を暗くし、シャッタースピートを2秒にし、1秒経過したあたりで手動でフラッシュを焚くという方法で対処しました。モニターで見てもフレーム間でずれが出ていたので、CombineZPのAlign…(quick)を行いました。

ディフューザは対物レンズの周りを紙でくるっと巻きストロボ1灯で撮影したところ陰が出過ぎたので、紙を2重にして2灯にしてみたところ陰が無くなって立体感がまるでないという状態になってしまったので、片方を弱めにするなどした方が良いかもしれません。

とりあえず、十円玉の鳳凰さんを撮影してみました。1枚目がストロボ1灯でテレコン無し、2枚目が2灯でテレコン有りです。クリックするとオリジナル画像が見れますが、ファイルサイズが1.2MBと2MBありますので注意してください。

現状のシステムよりはかなり解像度が高くなったので、なんとか仕上げて使いやすくしたいと思います。

2012年8月30日

?キアシクロヒメテントウ属 ?Stethorus (続き)

前回採って来た蛹から成虫が羽化してきました。



体長は約1.6mmです。
キアシでしょうか?

※最初の2枚は手持ちで4枚撮影して深度合成しました。手持ちの場合、CombineZPの遅い方のAlign『Align and balance used frames (thorough)』を使うと、回転の補正もしてくれるので、だいぶマシなようです。すごい時間が掛かるので、枚数が多いとやる気がしませんが。

投稿した後少し調べていましたが、なんか難しそうです。
日本産Stethorusキアシクロヒメテントウ属の再検討

2011年12月22日

CombineZP その2

カテゴリー: 2.道具, 深度合成 — Hepota2 @ 23:51

CombineZPで、うまくいかないケースを見つけました。

被写体は最近登場したムネアブラムシです。下の写真は上から見たところです。縁まで真っ黒です。

別のアングルで”Do Stack”を使った場合です。縁の部分(矢印)がおかしくなってます。

下は”Pyramid Weighted Average”を使った場合。問題は少なそうですが、なんだかぼやけてます。

下は”Pyramid Do Stack”を使った場合。多少変ですが、いちばんマシかなという気がします。常にうまくいくのかどうかはわかりませんが。

今後掲載する写真には深度合成したという情報を入れたいと思います。忘れなければ…。

撮影順序は、手前から奥にならんでいる必要があるようです。入れ替える機能もありますが。

いくつかのケースで使用メモリと処理時間を測りました。
マシンは6年ぐらい前のもので、メモリは2.5GBに増設してあります。
1600×1200ピクセル、”Align and Balance Used Frames (Quick)” + “Do Stack”の場合:
10枚の合成で、メモリ284MB、処理時間45秒。
20枚で、372MB、1分5秒。
30枚で、459MB、1分22秒。

2560×1920ピクセル、”Align and Balance Used Frames (Quick)” + “Do Stack”の場合:
10枚で、660MB、1分40秒。
20枚で、830MB、2分23秒。
30枚で、1GB、3分20秒。
40枚で、1.25GB、4分16秒。

2560×1920ピクセル、”Align and Balance Used Frames (Quick)” + “Pyramid Do Stack”の場合:
10枚で、1GB、2分10秒。
20枚で、1.2GB、3分25秒。
30枚で、1.35GB、5分。
40枚で、1.36GB、6分26秒

メモリの使用量は1.3GBから1.5GBあたりから増えないようです。処理は行われるので、ディスクを利用していると思います。このメモリの使用量を指定するオプションは無いみたいです。メインメモリは2GBあるものとして作られているような感じです。

メモリが実メモリを超えるとハードディスクが使われますが、ハードディスクのアクセスタイムはmsオーダなので、急速に遅くなりますから、うまく収まるように調整した方が良いです。
ネット上で、CombineZPが遅いという情報がありますが、ムダに大きな画像を食わせているのだと思います。

いくつか身近なものを撮影したので載せておきます。わかります?

▼問1

▼問2

▼問3

▼問4

答えはこちら

2011年12月10日

手持ち深度合成

CombineZという深度合成用のフリーソフトの存在は半年ぐらいまえに知ったのですが、大掛かりな撮影台が必要だろうと思って無視していたのですが、どうも位置のずれを合わせてくれる機能があるらしく、手持ちでも大丈夫か試してみました。

とりあえず結果です。画像をクリックすると大きくなります。

■E-410 + ZD 14-54mm F2.8-3.5 II リバース, 約6.7倍(13.4倍相当), F5, CombineZP 17枚合成
被写体はグミ(?)の葉裏にいたアブラムシです。体長は1.3mmほどです。黄色いのは卵でしょうか?なんでこんなところに?
ezo-aphidさんに教えていただきました。Capitophorus属の卵生雌だそうです。


■E-410 + ZD 14-54mm F2.8-3.5 II リバース, 約3.7倍(7.4倍相当), F5.6, CombineZP 14枚合成
こちらは家の壁にいた双翅目です。体長約2.3mmです。
こちらもezo-aphidさんに教わりました。クロキノコバエ科 Sciaridae の雌だそうです。

1枚目に使用した17枚の元画像をアニメーションGIFにしてみましたが、これだけずれていても自動的に補正されました。すばらしい!
クリックしてください。

撮影方法は、手で持った被写体を少しずつ動かしながら連写します。連写するにはストロボを小出力にする必要があるので、被写体の近くにヘッドを置き小さなディフューザを使うようにしますが、邪魔でやりにくいです。ただ小出力にした方がブレは少なくなると思います。動いている被写体は、もちろんダメです。絞りはある程度開いた方が解像度は上がるでしょうが、細かく動かさないと、ピントの合わない領域ができますが、手持ちではそんなに細かく動かせませんので、ほどほどにしておきます。この撮影方法専用ならば、自動絞りで無くても良いので、いろいろなレンズが使えそうです。コンデジの場合、連写でストロボが使えないと思うので、外部ストロボを使う必要があるかと思います。ストロボ光100%近くにしないとブレますが、コンデジは明るいので(同じ大きさに写す場合でも撮影倍率が低いため)、暗い場所でないとダメかもしれません。
2011年12月11日追記:必ずしも連写する必要はありません。ピント位置を変えて何枚か撮影すれば良く、現状の装備でもできると思うので、ぜひみなさんもお試しください。

CombineZはフリーソフトです。Alan Hadleyさんのサイトからダウンロードしてください。この記事を書いている時点での最新版はCombineZPです。一つ前のCombineZMの使い方が丸山宗利研究室 CombineZMの使い方に載っています。

私は新しいバージョンを使いました。やや使い方が変わっているようなので、補足しておきます。ドキュメントは読んでないので参考程度に。

(1) 1のボタンをクリックしてファイルを複数選択します。
(2) 2で”Align and Balance Used Frames (… “を選び、4のボタンを押す。位置のずれが補正されます。
(3) 2で”Do Stack”を選び4のGoボタンを押す。
(4) 5のボタンを押すとトリミングできます。
(5) 6のボタンを押してファイルに書き出す。

下はDo Stackが完了した時点の画像です。位置を合わせるため端の方が変になるので、少しトリミングします。

CombineZは今のところWindows専用です。WindowsXPで追加されたAPIを使っているようで、Windows2000では動きませんでした。

メモリと時間をすごく食うので先に画像を縮小しておいた方が良いです。私のマシンは6年くらい前のモデルでOSはWindowsXP、メモリは512Mバイトですが、1920×1440ピクセルに縮小してから処理すれば、メモリ的にはなんとかなりました。処理時間も1セットにつき5分はかかってないと思います。

色が変わるようなのですが、私のやり方がまずいのでしょうか。

しばらく遊べそうです。

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