長坂蛾庭

2017年10月30日

本州で見られるヒメキジラミ属4種について

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, — Hepota2 @ 16:15

ヒメキジラミはカメムシ目(Hemiptera)キジラミ上科(Psylloidea)ヒメキジラミ科(Calophyidae)に属する昆虫の総称です。日本で記録のあるヒメキジラミは1属5種です。そのうち本州で記録のある4種の写真がすべて揃ったのでまとめてみました。

なお私はキジラミに関してシロウトで文献の一部を拾い読みしながらこの記事を書いておりますので、間違いもあるかもしれません。確かな情報は専門家によって書かれた文献をご覧になってください。

一般的な注意ですが
・ 以下で全長という用語は翅端までの長さです。キジラミの成虫は標本にして乾燥すると腹部が縮むので、体長ではなく全長が使われるようです。
・ キジラミの♂は♀より小さいようです。腹部先端が後ろに伸びていれば♀、背面側に曲がっていればオスです。
・ キジラミの多くが成虫越冬で秋が深まるにつれて体色が濃くなっていきます。
・ キジラミの成虫は羽化後しばらくするとホストを離れて分散するので、ホスト以外で見つかることもふつうにあります。

ヒメキジラミの特徴

翅脈はキジラミ科と似ていて、触角の先端の2本の剛毛が長いようです。

日本で記録のあるヒメキジラミ科

マンゴーキジラミ Calophya mangiferae マンゴー Mangifera indica 琉球、東南アジア
クロヒメキジラミ
(キハダヒメキジラミ)
C. nigra キハダ Phellodendron amurense 北海道、本州
セグロヒメキジラミ C. nigridorsalis ハゼノキ・ウルシ類 Toxicodendron spp. 北海道〜琉球、台湾
ニガキヒメキジラミ C. shinjii ニガキ Picrasma quassioides 北海道〜九州、韓国
マルアゴヒメキジラミ C. verticornis ヌルデ Rhus javanica 本州、四国、韓国

このうち、マンゴーキジラミを除く4種が本州で見られます。偶然と思われますが4種のホストはどれも羽状複葉で似た雰囲気の葉っぱです。

簡易検索

色だけを使った検索表を示します。厳密な同定には文献を御覧ください。

1a 腹部が黄色から暗褐色 -> 2
1b 腹部が緑 -> 3
2a 触角全体が黄色、前翅は透明 ……… セグロヒメキジラミ
2b 触角の先端が黒、前翅はやや黄色い ……… マルアゴヒメキジラミ
3a 触角の先端が黒、成熟個体の頭胸部は茶褐色 ……… ニガキヒメキジラミ
3b 触角の先端半分くらいが黒っぽい、成熟個体の頭胸部は黒 ……… クロヒメキジラミ

セグロヒメキジラミ Calophya nigridorsalis Kuwayama, 1908

体色は黄色から暗褐色。触角全体が黄色。前翅は透明。額錐は横に広がる。全長は2mm前後。幼虫のホストはハゼノキ、ウルシ類。

北杜市ではウルシ、ヤマウルシはかなり普通に見られますが、幼虫は局所的に集団で発生しているようでした。なので幼虫を見つけるのは難しいです。成虫は4種の中ではもっとも多く見られます。


セグロヒメキジラミ ♀ 



セグロヒメキジラミ 1. テネラル♀。2.成熟♂。3.成熟♀ お腹が大きいのは卵が詰まっているのだと思います。4.越冬後♀。


セグロヒメキジラミ 1.額錐は横に広がる。2.幼虫。

マルアゴヒメキジラミ Calophya verticornis Kwon, 1983

体色は黄色から暗褐色。触角の先端2節が黒。前翅は透明で薄い斑紋がある。額錐がほとんどない。全長は2mm前後。幼虫のホストはヌルデ(ウルシ科)。

北杜市ではヌルデはウルシと同じくらい普通に生えていますが、いまだ一個体しか見ていません。来年もう少し観察してみたいと思います。


マルアゴヒメキジラミ♀ 斜め下から見た写真になったので翅形や翅脈はわかりにくくなってます。


下を向いているようで額錐がないのかどうかよくわからない。

ニガキヒメキジラミ Calophya shinjii Sasaki, 1954

頭胸部は赤褐色で腹部が緑色。触角の9,10節(先端2節)が黒。前翅は透明。額錐は下に伸びる。4種の中では最も大きく全長は約3mm。幼虫のホストはニガキ(ニガキ科)。

北杜市ではニガキは多くはないもののポツポツ点在して生えており、本種の幼虫も複数の場所で確認しました。集団で発生している場合と疎に発生している場合があるようで、寄生蜂の存在が影響しているのかもしれません。寄生蜂についてはこちらを御覧ください。


ニガキヒメキジラミ♀


ニガキヒメキジラミ 1. ♂ 2.テネラル


ニガキヒメキジラミ 1.額錐は下に伸びる 2.幼虫 甘露に包まれているのを多く見た。ちなみにこの甘露はものすごく苦い。

クロヒメキジラミ Calophya nigra Kuwayama, 1908

頭胸部が黒で腹部は緑色。触角の9,10節が黒で3〜8節は茶褐色。前翅は透明。額錐は下に伸びる。全長約2.5mm。幼虫のホストはキハダ(ミカン科)。

キハダの同定ができてないので、いまのところ植物園でしか見つけていません。秋にも幼虫を見たので多化性かと思います。


クロヒメキジラミ テネラル 頭胸部はこれから黒くなるものと思われます。


クロヒメキジラミ 1.顔 2.幼虫

参考文献

■Miyatake, Y (1992) A revision of the genus Calophya from Japan (Homoptera: Psylloidea, Psyllidae). Bulletin of the Osaka Museum of Natural History 46: 11-23. PDFダウンロード
■宮武頼夫・松本浩一・井上広光(2014)キジラミ類(カメムシ目)の絵解き検索.環境アセスメント動物調査手法, 24: 15-59.
■林 成多・宮武頼夫(2012)山陰地方のキジラミ図鑑.ホシザキグリーン財団研究報告特別号, (6): 1-97.
■Psyl’list > セグロヒメキジラミ
■Psyl’list > マルアゴヒメキジラミ
■Psyl’list > ニガキヒメキジラミ
■Psyl’list > クロヒメキジラミ

2017年7月16日

クロヒメキジラミ Calophya nigra

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, — Hepota2 @ 03:18

キハダにいたヒメキジラミです。

■ クロヒメキジラミ Colophya nigra

テネラルのようなので色がどうなるのかわかりませんが、ホストからクロヒメキジラミで良さそうです。成熟すると腹部は緑色で頭部と胸部が黒くなります。テネラルだとニガキヒメキジラミによく似ていますが、触角の先端の黒っぽい部分で区別できそうです。Miyatake1992によれば、クロヒメキジラミは9,10節が黒で3〜8節は茶褐色で、ニガキヒメキジラミは9,10節が黒とあります。

葉っぱで大量に発生した痕跡がありましたが、時期が遅かったようでいなくなっていました。枝に少し幼虫が残っていました。

学名はPsyl’listによれば Calophya nigra Kuwayama, 1908 から変わりなさそうです。

和名は、「山陰地方のキジラミ図鑑」ではキハダヒメキジラミとなっており、「キジラミ類の絵解き検索」ではクロヒメキジラミとなっていました。「キジラミ類の絵解き検索」の方があとに出版されたのですが、確認したほうが良いかもしれません。

参考文献
Miyatake, Y (1992) A revision of the genus Calophya from Japan (Homoptera: Psylloidea, Psyllidae). Bulletin of the Osaka Museum of Natural History 46: 11-23. PDFダウンロード

2017年7月1日

シラカバキジラミかな

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, — Hepota2 @ 00:17

6月2日にシラカバの葉で見つけたキジラミです。

1枚しか撮影できなくてあまり調べていなかったのですが、「キジラミ類の絵解き検索」を見ていたらシラカバにつくキジラミが載っていました。シラカバキジラミ Chamaepsylla hartigii (Flor, 1861) です。

旧北区や北アメリカにも分布している種で、学名で検索すると画像がたくさん見つかりました。雰囲気はかなり似ているのでそれっぽいです。幼虫から見つかればかなり可能性が高くなるので、今後注意してみようと思います。

2017年6月18日

ウワミズザクラキジラミから出てきた寄生蜂

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, ハチ目, — Hepota2 @ 22:29

少し前になりますが、ウワミズザクラキジラミ Psylla morimotoi Miyatake, 1963を観察していたところマミー化した幼虫を複数確認しました。6月2日撮影。

6つほど採集して持ち帰っていたら、寄生蜂が2種類羽化してきました。

1種目です。

これはおそらくTamarixa属の♀かと思います。
おちゃたてむしさんのブログに出てくる種類と腹部の背面が不定形に単色なのが似ていますね。

2種目です。
こちらは1種目と同じだろうと思ってすぐに冷凍庫に放り込んだので生きているときの写真は撮りませんでした。3個体羽化してきましたが触角から判断してすべて♂のようです。

これらはPsyllaephagusの♂っぽいです。

あと2つのマミーは脱出前に冷凍庫に入れたので、取り出してみたところ♀のようでした。

こちらはおそらくPsyllaephagusの♀かと思います。青っぽい色をしていますが、羽化したあとしばらくすると緑になる可能性も考えられるので、色で判断しないほうが良さそうです。

これ以上のことはわかりそうにないので保留しておきますが、コナジラミもそうなのですが、キジラミもかなり普通に寄生されている印象を受けました。このあたりも日本ではほとんど研究されていないのでしょうね。

2017年6月17日

アオハダネグロキジラミ Petalolyma shibatai Miyatake & Matsumoto, 2008.

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, — Hepota2 @ 00:00

北杜市に引っ越してから度々見かけていましたが、高倍率で撮影したのは初めてです。調べましてアオハダネグロキジラミで問題なさそうでした。


■アオハダネグロキジラミ Petalolyma shibatai Miyatake & Matsumoto, 2008.

ネグロキジラミ属は日本から3種記録があるようです。翅脈から判別する方法をキジラミ類の絵解き検索から引用しておきます。

わかりやすいように回転してみましたが、間違いなさそうです。

ネグロキジラミはBABAさんのブログにあります。
虫をデザインしたのはダレ

キバネネグロキジラミはtukikさんのブログにあります。
小さきものたちの世界

翅脈以外のわかりやすい情報をまとめると、

和名 体色 翅の色 場所 ホスト
ネグロキジラミ 茶褐色 透明 本州〜九州(平地) ナナミノキ Ilex chinensis
アオハダネグロキジラミ 透明 本州〜九州(山地) アオハダ Ilex macropoda
キバネネグロキジラミ 黄色み 沖縄、九州 ツゲモチ Ilex goshiensis

アオハダネグロキジラミの幼虫はアオハダにゴールを作るようです。まぁさんのブログにゴールの写真が載ってます。ゴールの名前は日本原色虫えい図鑑にはアオハダハベリオレフシとなっているらしいですが未確認です。
道草食ってみよっ♪

学名はPsyl’listによれば変更されてないみたいです。

【参考文献】
■宮武頼夫・松本浩一・井上広光(2014)キジラミ類(カメムシ目)の絵解き検索.環境アセスメント動物調査手法, 24: 15-59.
■林 成多・宮武頼夫(2012)山陰地方のキジラミ図鑑.ホシザキグリーン財団研究報告特別号, (6): 1-97.
■Psyl’list > アオハダネグロキジラミ Petalolyma shibatai Miyatake & Matsumoto, 2008
■Psyl’list > ネグロキジラミ Petalolyma bicolor (Kuwayama, 1910)
■Psyl’list > キバネネグロキジラミ Petalolyma divisa (Crawford, 1917)

2017年6月16日

セグロヒメキジラミ Calophya nigridorsalis Kuwayama, 1908

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, — Hepota2 @ 02:40

先日、ウルシ(Toxicodendron vernicifluum) の葉裏で見つけたヒメキジラミです。

葉っぱの裏には成虫に混じって、色々なステージの幼虫がいました。少しずつ卵を産んでいるからなのでしょうか。ヒラタアブの卵もあるので、生まれたら一掃されるかもしれません。

葉表に毛がないようでしたので、無印のウルシと思います。触ってますが私はウルシにはかぶれないみたいです。

この仲間は顔を見ないと正確に識別できないので、念のため採集しておきました。

額錐が「キジラミ類の絵解き検索」の図と少し違う気がしたのですが、ツイッターに投稿してYMiyaさんからセグロヒメキジラミ良いというご教示をいただきましたので、タイトルを確定しておきました。

おちゃたてむしさんのブログに出てくるものとはかなり色が違ってますが、あれは最近成熟した個体なのかもしれません。おそらく一月経つとかなり色がついてくるのでしょう。

翅形が似ているマルアゴヒメキジラミはヌルデ(Rhus javanica)につくそうなので探してみたいと思います。

学名はPsyl’listによれば変更ないみたいです。

2017年6月15日

クマヤナギトガリキジラミ Trioza berchemiae

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, — Hepota2 @ 00:44

少し前の5月27日、クマヤナギの葉っぱにクマヤナギハフクロフシというゴールを見つけました。クマヤナギトガリキジラミの幼虫が作るゴールです。

中をみるとまだ若齢っぽい幼虫がいました。

それからしばらくたった昨日(6月14日)に行ってみたらちょうど成虫が出ていました。テネラルっぽいので、これから色は変わっていくかもしれません。

トガリキジラミ科で前翅の後縁に褐色の帯があるのはクマヤナギトガリキジラミだけのようなので間違いなさそうです。

ゴールは薄いヘラ状で裏から出入りできるようです。そのためか幼虫の体も薄っぺらい作りになっています。

学名はPsyl’listで確認してみると Trioza berchemiae Shinji, 1938 から変更ないみたいです。

【参考】

■宮武頼夫・松本浩一・井上広光(2014)キジラミ類(カメムシ目)の絵解き検索.環境アセスメント動物調査手法, 24: 15-59.

林 成多・宮武頼夫(2012)山陰地方のキジラミ図鑑.ホシザキグリーン財団研究報告特別号, (6): 1-97.

2017年6月7日

ニガキヒメキジラミの寄生蜂 ヒメコバチ科 ?Tamarixia sp.

カテゴリー: 1.自然観察, カメムシ目, キジラミ, ハチ目, — Hepota2 @ 14:46

先日見つけたニガキヒメキジラミですが、寄生されているっぽい幼虫がいたので採ってきたところ、やはり寄生蜂が羽化してきました。
2017年6月3日 ニガキヒメキジラミ Calophya shinjii Sasaki, 1954

生時の写真と、脱出したあとです。

詳しく調べるために、冷凍ジメして撮影しました。写真はクリックすると大きくなります。

腹部の拡大写真です。割れ目があって、針っぽいものがしまわれてますね。これが産卵管じゃないかと思います。

おちゃたてさんのブログに同じ仲間と思われる産卵シーンが載ってますが、やはり産卵管は腹部の基部よりから出ています。
2013年3月23日 カシトガリキジラミに産卵するヒメコバチ科の一種(?Tamarixia sp.)

さて、素人がコバチの名前を調べるのは不可能に近いのですが、今回はホストがわかっているので、ezo-aphidさんから教わった方法で調べてみましょう。

NHMのコバチ上科DBの検索ページ

で、”Chalcidoid associates of named taxon”をクリックして、ホストから検索するページに移動します。

今回は、ヒメキジラミ属(Calophya)なので”Associate genus”の欄に”Calophya”を入力してSearchをクリックします。

結果としてPsyllaephagus属とTamarixia属が出てきます。

ネットで画像検索するとPsyllaephagusはまったく違うので、Tamarixia属っぽいというのがわかります。名前が出てきたT. triozaeT. schinaを検索してみます。

Tamarixia triozaeはトマトやジャガイモにつくキジラミParatrioza cockerelliの生物農薬として使われているようです。以下のPDFに載ってました。脛節も黒いので今回見つけたのとは違うようです。
http://www.tomatoesnz.co.nz/assets/Uploads/Tamarixia-factsheet-FINAL.pdf

Tamarixia schinaは2011年に記載されたようです。元記載のPDFが以下のサイトからダウンロードできます。
Zuparko et al. (2011) Two new species of Tamarixia (Hymenoptera: Eulophidae) from Chile and Australia, established as biological control agents of invasive psyllids (Hemiptera: Calophyidae, Triozidae) in California. Zootaxa 2921: 13-27.
Zootaxa 2921: 1-64
背中の棘の配置はよく似ているのですが、やはり脛節が黒いので違うようです。

あとはTamarixiaで画像検索してみましたが、似たようなのは見つかりませんでした。Tamarixia属は52種ほど記録があるようなので、これ以上は無理っぽいです。

結局、よくわかりませんでしたが、多少なりとも知識が広がったようなきがするので…

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