5月3日、ウラジロノキでキジラミの幼虫を見つけました。葉にぽつぽつと分散して付いています。ゴールは作らないようです。



5月15日、再訪してみたところちょうど成虫が羽化した直後だったようです。数匹採集してきまして、少し成熟させてから撮影しました。


■ ベニウラジロノキキジラミ Cacopsylla peninsularis (Kwon, 1983)
日本でウラジロノキから記録のあるキジラミは3種で、2種は翅に色がつくため、これはベニウラジロノキキジラミのようです。
形態はベニキジラミに似るらしいのですが、触角先端の2本の毛で識別できるようです。短い方が長い方の1/2より長ければベニウラジロノキキジラミ、短ければベニキジラミ。



学名は、日本昆虫目録では Cacopsylla sorbicoccinea Inoue, 2004 となっていますが、Psyl’listによれば、2017年に C. peninsularis にシノニマイズされたようです。
※ Psyl’listは現在アクセスできなくなってます。
6月26日、山梨県、不明樹木にて、見たことのないキジラミを見つけました。交尾している成虫やいろいろなステージの幼虫もいます。



樹木の方はこんなのです。




ツイッターに投稿したところ、擬燈蛾(@Epitrioza)さまより、シナノナシキジラミと教えていただきました。アオナシにつくということです。ありがとうございます。
学名で検索すると、写真が記載された文献がみつかりました。特徴的な斑紋とホストからシナノナシキジラミでほぼ間違いなさそうです。
ホストの方は、アオナシの可能性はありそうですが、もう少し調べた方が良さそうなので、果実ができたころに訪れて確認してみたいと思います。アオナシにしか付かないとすると、アオナシの分布はかなり限られており、本種の分布も限られていそうです。
7月8日、持ち帰った幼虫が羽化しており、そして交尾していました。


■シナノナシキジラミ新成虫 Cacopsylla maculatili Li, 2011
年1化の場合交尾は産卵前に行われると思うので(要確認)、こいつは年2化なのではないかと思います。黒い大きな斑紋は、前翅後縁の紋と、腹部の背面の紋が合わさったもののようです。
【参考文献】
・ Cho, G et al. (2017) Systematics of the east Palaearctic pear psyllids (Hemiptera: Psylloidea) with particular focus on the Japanese and Korean fauna. Zootaxa, 4362, 75-98. PDF
・ 井上広光 (2018) 風変わりなキジラミ. 昆蟲.ニューシリーズ, 21(3), 202-204.
PDF
・Psyl’list
6月15日、ヤマハンノキの木の股のところで、キジラミの幼虫を見つけました。お尻から綿のようなワックスを出していて、ウワミズザクラキジラミの幼虫みたいです。


6月17日、少し採集してきた幼虫が羽化しました。

■ ?ハンノキキジラミ Psylla ?alni (Linnaeus, 1758)
ヤマハンノキにつくキジラミで日本で記録があるのはハンノキキジラミだけのようなのですが、イギリスのサイトの情報を見ると、前縁の翅脈が緑色らしいです。うーん、どうでしょう? まだ未成熟だからかもしれませんが、少し怪しいのでタイトルは?付きにしておきました。
参考
・Psyl’list
・British Bugs
5月23日、ヤブデマリとコバノガマズミの花柄でキジラミが発生しているのを見つけていたので、ガマズミでも探していたところ、標高1,000m付近のガマズミで卵を見つけました。

6月5日、幼虫が出現していました。


6月12日、新成虫が出現していました。花がちょうど咲き始めていました。



絵解き検索ではガマズミ類につくキジラミとしてガマズミキジラミが載っており前翅は黄白色~乳白色となっているのですが、井上広光先生から伺った話によるとそのような翅の色になるのはオオカメノキにつく種だということです。
難しい種類のような気がするので、井上先生にサンプルを送ってみてもらおうかと思っています。結果がわかりましたら追記したいと思います。
甲府で見つけました。
センダンの葉にいたキジラミです。


■ センダンコクロキジラミ Metapsylla uei Miyatake, 1963
展開中の葉っぱのごちゃごちゃしたところに付いてました。

センダンにはよく似たコクロキジラミもつくのですが、翅形が違うようですし、こちらはセンダンコクロキジラミであってると思います。翅形についてはこちらをごらんください。
新成虫は6月に出て緑色をしているようなので、これは越冬成虫のようです。
センダンは南方系の樹木らしいのですが、甲府では公園にも植えられていますし、甲府の町の近くの林では逸出したものも見られます。
ウリハダカエデにいたキジラミです。
特徴的な斑紋と翅脈からカエデキジラミで良さそうです。


■ カエデキジラミ Cacopsylla japonica (Kuwayama, 1955)
複数の個体がウリハダカエデの葉の基部のところにいました。何か意味があるのでしょうか?

『キジラミ類の絵解き検索』によると、ホストはウリハダカエデとオガラバナということです。
越冬成虫でしょうか?
幼虫をまだ見てないので、観察を続けてみます。
2020年11月1日追記: ツイッターに新成虫の写真を載せたところ、宮武先生からクリトガリキジラミで良いと教えていただいたので、大丈夫そうです。ミズナラに付く不明種がいるとの情報もいただきましたので、以後そちらも注意してみたいと思います。
清里の標高1,300mぐらいの場所にある公園にコナラが植えられていて、その葉にキジラミの幼虫がついていました。葉に小さなゴールを作っています。



ホストから調べると、クリトガリキジラミが候補として見つかったのですが、幼虫に関する情報がなくてはっきりしません。とりあえあず?付きでアップしておきます。
おそらくこれから羽化して成虫で越冬すると思います。成虫が見れるといいのですが。
2020年10月30日追記。
新成虫を一匹見つけました。雌のようです。




■ クリトガリキジラミ Trioza quercicola Shinji, 1944
近縁種とは額錐とか雌交尾器とかで区別できるようなのですが、よくわかりませんでした。ただ、近縁種はどれも常緑のカシ類につき、この場所では植えられていない思います。標高700mぐらいだとシラカシが植えられていたりしますが。
そういうわけで、クリトガリキジラミとしておきましょう。
原記載は、下記Psyl’listの Shinji O. 1944 の右側のPDFアイコンをクリックすると見れます。日本語ですが旧字体です。図もなくてよくわかりません。
Psyl’list
「触角は7−9節からなり、第3−7もしくは9節は黒色で糸状」と書かれているのが、少し気になります。まっ、とりあえずいいや。
2020年11月3日追記
成虫の色がついてきたので追加しておきます。触角は4節目(?)から先が黒くなりました。原記載はちょっと意味不明なところがあって、触角は7-9節と書かれているのに10節目が出てきたり、よくわからないのでまぁヨシとしておきましょう。

